JARL選挙の公正は死んだのか

2020年JARL選挙に関し、少なくとも4件もの異議申立てがされたことを、5月18日のブログ記事でご報告しました。そのうち、JR7JAW槻木澤稔氏(東北社員当選者)に対する異議2件について、5月27日付けで選挙管理会による裁定がなされたとのご連絡を、異議申立人のおふたりからいただきました。

選挙規程32条によれば、裁定の要旨が告示されるはずなのですが、JARL Webになかなか掲載されません(まさか、本部にこそっと掲示するだけで「告示」とするつもりではないと思いますが・・。)。そこで、事務局からJK7LXU石岡洋一さん(次期東北社員)に送られてきた裁定文を、ご本人のご了解を得て公開します(ちなみにもう1件も、全く同一文でした。)。

(3)裁定
 東北地方本部区域毎の社員の選挙において、被申立人名によって発せられた選挙運動の文書は、会員の個人情報を選挙活動において目的外使用したかのごとく、選挙人に対し疑念を与えた選挙運動であると認定したので、被申立人に対し、文書により「勧告」とする。

(理由)
 申立人の異議申立書類として提訴された証拠物件は、被申立人名による郵便はがきにより発せられたことは疑いがないが、被申立人の釈明書においては、同人の支援者が好意によって発したとしている。
 被申立人は青森県支部の監査指導委員長として長年に亘りアマチュア無線制度の適正利用に関する業務を担当しており、各県支部役員は、会員のサービス業務を円滑に実施するためには、会員の所在地を正確に把握して、正しく各種業務を伝達することが望ましい。依って、役員間で会員の所在地を共有することは、公平性を著しく阻害するものでないと解する。
 しかし、情報を共有する立場にある者は、選挙活動において支援者等立候補者本人以外からの情報発信においても、選挙人に対して疑念を与えぬよう細心の注意を払うことが求められる。
 したがって、本件で疑念を与える結果となった行為に関し、選挙規程第33条1号による「勧告」とする。

残念ながら、およそ非論理的で、ツッコミ処満載の裁定文です。

  • 申立人に送られた選挙ハガキは、髙尾義則会長、槻木澤稔氏他の連名です。「支援者」の氏名・属性が認定されていませんが、誰のことなのでしょうか。「自分ではなく支援者が送った」などという被申立人の弁明を、選挙管理会はたやすく信じてしまうのでしょうか(なお、「釈明書」そのものは異議申立人に送られてこなかったそうです。反論の機会が与えられていません。)。
  • 「好意で」というのは、名義人の了解なく発送した、という意味でしょうか。そんなことがありうるのでしょうか。万が一了解なく発送したのだとしても、連座制として、候補者が責任を負うべきではないでしょうか。
  • 最も重要な点ですが、本件で問題とされるべき「選挙における公平性」は、支部役員として会員情報にアクセスできる候補者とそうでない候補者の間で「公平性」が確保されなければならない、という点のはずですが、選挙管理会は問題をすり替えており、異議申立人の問いかけに全く答えていません。選挙管理会は、「支部で頑張っている人は、支部活動で得た会員の個人情報を選挙活動に利用してよい」と、お墨付きを与えるつもりなのでしょうか。
  • 選挙人が抱いた「支部活動で得られた会員の個人情報が選挙活動に利用されている」という「疑問」は、実際のところ、事実・真実だったのではないでしょうか。それを「疑念」と呼ぶとは、選挙人に対しずいぶんと失礼な言い回しではないでしょうか。
  • 選挙管理会は被申立人に、何を「勧告」しているのでしょうか。「勧告」「警告」「当選の取消し」「選挙の無効」という処分の中で最も軽い「勧告」とするとの結論ありきだったのではないでしょうか。

選挙管理会こそは、公正に判断をしてくれると期待をしていましたが、その期待は裏切られ、今後に禍根を残す、選挙の公正とはほど遠い先例を残してしまいました。選挙管理会が現執行部に忖度しているか、現執行部が代わりに作成したとの疑念すら抱かざるを得ません。

なお、JE4WWK金子由次氏(中国理事候補者当選者)に対する異議2件については、未だ裁定がなされていません。一方で、金子氏を含む理事候補者の理事就任を審議する2020年6月28日の社員総会について、できるだけ早く「議決権行使書」を提出するよう求める手紙が、社員の皆さんに送られたようです(JO1EUJ高橋社員のブログ記事他の情報による。)。

ですが、「新型コロナウイルス対策」と、議決権行使書を早く出すことは、あまり関係がないように思えます。現執行部は、社員の皆さんが裁定の内容を知る前に、早々に「金子氏承認」との議決権行使書を集めたいと思っているのではないでしょうか。

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選挙管理会には、金子氏については公正な判断をされるよう、一縷の望みをつなぐとともに、社員の皆さんには、今回の社員総会につき、賢明かつ冷静なご判断をお願いしたいと思います(なお、議決権行使書・委任状を一度出してしまっても、社員総会の直前の業務時間終了時までは、出し直すことができます。社員総会議事運営規程第5条)。

(2020-06-03 記)

なお、今回の4件の異議のうち3件は、JARLが保有する個人情報に関するものだったことを受けて、5月23日の理事会に、JA1NVF吉沼勝美理事が、以下の議案を提案されていました。

第1 「一般社団法人日本アマチュア無線連盟のセキュリティポリシー」を以下のとおり改正する。

「4 個人情報の管理について」に、(4)として以下を加える。

「(4) JARLは、会員の個人情報(ただし、最新の会員局名録に掲載されている情報を除く。)を、選挙運動に利用しようとする特定の候補者に対し提供しません。会員局名録に掲載されているか否かを問わず、会員の個人情報の電子データも同様とします。」

しかし、髙尾会長は、この議案を、確定していない事実を前提にした提案であり「取り上げるべきではない」と述べ、9人の理事を巻き込んで葬り去りました(第50回理事会報告(会員のみ閲覧可))。

選挙管理会の裁定が5月23日の理事会の時点で出ていなかったのは確かですが、疑いが生じた以上、規則で手当てして予防するのは当然のことです。そもそも、理事会には全ての理事が提案権を有しますから、「取り上げるべきではない」との採決はあり得ないと考えます。

(以上、2020-06-03 08:30追記)

選挙規程32条は、裁定の要旨を告示することを義務づけています。「まさか、本部にこそっと掲示するだけで「告示」とするつもりではないと思いますが・・。」と書きましたが、その、まさか、でした。

2020年6月9日にJARL本部を訪れたときに見つけました。なお、裁定の「要旨」を告示することになっているのは、申立人の個人名は削除する等、プライバシーに配慮する趣旨と思われますが、裁定文そのものが貼り付けられていました(そのため、上記の写真は一部加工しています。)。

過去の裁定文は、未だにネット公開されているものがあります。髙尾会長が支援する候補者については、ネット公開されないというダブルスタンダードなのでしょうか。

また、中国理事候補者当選者であるJE4WWK金子由次氏に対する裁定は、未だに申立人のところに届きません。JA4DLF綱島俊昭氏による選挙異議申立書は、JARL事務局に5月8日10時27分に到達していますので、裁定は、選挙規定32条2項により、5月8日から30日目の日である6月7日(休日であることを考慮すると6月8日(月))までに下されるべきでした(なお、もう1件の申立ては綱島氏より早かったので、もっと早く裁定が下されないといけなかったはずです)。なお、選挙管理会から綱島氏宛の受理通知には、「5月12日受理しました」と記載されていましたが、5月12日から起算して30日以内という解釈は、選挙管理会が受理日を意図的に遅らせることによって30日以内という期限が無意味となりますので、私は、誤った解釈と考えます。以上の点を指摘するメールを選挙管理会に送りましたが、返事はありません。

(以上 2020-06-11 追記)

11件のコメント

  1. […] 2019年10月以降、「業務打ち合わせ」のための領収書が散見されるようになります。これらの「業務打ち合わせ」の出張先は、高尾氏が選挙のために結成した「JARL会員ファーストの会」のメンバー(理事候補者)であるJA8ATG原恒夫氏(北海道)、JA8DKJ三井武氏(北海道)、JH1NLL安部慈孝氏(宇都宮)、JA6HUG中村信雄氏(福岡)と、高尾氏が強力に支持していた東北地方社員候補者であるJR7JAW槻木澤稔氏(青森県)の居住地と奇妙に一致します。 […]

  2. […] 2019年10月以降、「業務打ち合わせ」のための領収書が散見されるようになります。これらの「業務打ち合わせ」の出張先は、高尾氏が選挙のために結成した「JARL会員ファーストの会」のメンバー(理事候補者)であるJA8ATG原恒夫氏(北海道)、JA8DKJ三井武氏(北海道)、JH1NLL安部慈孝氏(宇都宮)、JA6HUG中村信雄氏(福岡)と、高尾氏が強力に支持していた東北地方社員候補者であるJR7JAW槻木澤稔氏(青森県)の居住地と奇妙に一致します。 […]

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