新デジタルモード「Q65」

ご注意)「Q65」はまだβ版です。この記事も速報ベースです。様々な面において、自己責任でお願い致します。

RC1の公開まで

昨年末、WSJT-Xの次期バージョン(2.4.0)に新しいデジタルモード「Q65」が搭載されると予告されていました。

ARRL (早い。さすがですね。)
http://www.arrl.org/news/wsjt-x-2-4-0-introduces-new-digital-protocol-q65

Hamlife.jp
https://www.hamlife.jp/2021/01/09/wsjt-x-2-4-0-q65/

それからひと月。β版(Candidate Release 1)が公開されたことを、2021年2月4日付けのJL1JTVさんのブログ記事で知りました(ありがとうございます。)。

WSJT-X 2.4.0-rc1 リリース(JL1JVTのブログ)

インストール

ダウンロードはここから
https://physics.princeton.edu/pulsar/K1JT/wsjtx.html

私の環境(Windows10)では、特に問題なくインストールできました。使用期限は4月27日まで。

Quick-Start Guide to Q65  K1JT Joe Taylor氏によるもの。必読です。
https://physics.princeton.edu/pulsar/K1JT/Q65_Quick_Start.pdf

JAでの免許

デジタルモードについては昨年、ありがたいことに免許手続きが大幅に規制緩和・簡素化されました。自己責任でご判断いただきたいですが、すでにFT8等の手続きをきちんと済ませていて、局免に「F1D」(を含む電波型式)が指定されている局は、事前の変更申請も事後の届出も不要で、即運用できます(このモードに秘匿性がないことについては、WSJT-Xのホームページに仕様が公開されているのでクリアされていると考えます。)。ご自分の免許をダブルチェックして、自己責任で運用開始しましょう。

総通はコロナ禍でお忙しそうですし、問い合わせは控えましょう

2月4日の自宅勤務昼休み中に、JQ1MSQ局とさっそくファーストQSOさせていただきました(^^)

デコードの遅れ

まだβ版だからでしょうか、デコードに時間がかかるようです。なので、 CQ出す→コールいただく→デコードの前に次のCQが始まってしまう→CQの途中でようやくデコード→もう1回コールいただく→ようやく返事できる という感じです。呼ぶ側は1回目でコールバックなくてもめげずにもう1回呼ぶ必要がありそうです。

送受信の時間

・WSJT-Xの画面真ん中の下のあたり、「T/R」で送受信の時間を切り替えできます。15秒、30秒、60秒、120秒、300秒(5分!)の5つのモードがあります。

ウォーターフォールをしっかり見て、相手が設定している時間と自分が設定している時間が合っているか、確認が必要です。

↓合っています(相手の信号と、緑の横線が揃っています。両方15秒モード)

↓合っていません(相手の信号と、緑の横線が揃っていません。先方は30秒モードで送信していますが、こちらは15秒モード。これでは復調できません。こちらも30秒モードに合わせましょう。)

60秒にすると、むかし懐かしいJT65のような音がします。

送受信の帯域幅

AからHまで、8種類の「サブモード」が用意されています。送受信の帯域幅が変わります。

総務省告示(無線設備規則別表第二号第54の規定に基づくアマチュア局の無線設備の占有周波数帯幅の許容値)により、「F1D」の占有周波数帯幅は2kHz以下に抑えないといけません。

Quick-Start Guideによれば、 サブモードAは占有周波数帯幅(occupied bandwidths)が1倍、Bは2倍、以下順に4倍、8倍、16倍になると書かれています。ところが、実際のソフトでは、SubmodeはHまで実装されています。Fは32倍、Gは64倍、Hは128倍でしょうか?

たとえば、15秒でSubmodeをDに設定する(「Q65-15D」と表記するらしい)と、ウォーターフォール上の赤いスケールがびよーんと伸びて、3500Hzくらいの幅になります。これは、2kHzを超えていますので、JAでは送信してはいけません。

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推測ですが、各Submodeの占有周波数帯幅は以下のようになると思われます(Quick-Start Guideの表の数値と若干ズレがありますので、あくまで推測です。)。そして、赤でぬったSubmode(例えば、15秒モードではSubmode D以上、30秒モードではSubmode E以上)は、JAでは使えないということになると思われます。

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実際、どの時間・サブモードで運用するか?

Quick-Start Guideには、「おすすめのサブモード」が書かれています。

• Ionospheric scatter on 50 MHz: 30A (6mのスキャッター)
• QRP ionospheric scatter on 50 MHz: 120E (6mのスキャッター・QRP)
• Ionospheric scatter on 144 MHz: 60C (2mのスキャッター)
• Troposcatter and rainscatter at 10 GHz: 60D (10GHzのトロッポ、雨スキャッター)
• Small-dish EME, 10 and 24 GHz: 120E (10/24GHzのEME)
• Other EME: 50, 144 MHz 60A; 432 MHz 60B; 1296 MHz: 60C; 10 GHz: 60D (EME)

なんだか「すごい」運用ばかりです(汗)。

過去のWSJT-Xの各モードよりも感度がよいというようなことが書かれている(On-the-air experience during the first six months of testing has shown that Q65 is more sensitive than any other WSJT-X mode when path Doppler spread is more than a few Hz.)ので、ひょっとすると、15秒のFT8も60秒のJT65もWSPRも、この「Q65」に収れんしていくかもしれません。もしそうなるとすると、「ふつう」の運用形態で使われるSubmodeは、運用者が増えていくにつれて慣習的に決まっていくのでしょうか。

私としては、弱小設備でも遊べたJT65の時代が懐かしく、30秒モードや60秒モードが流行ってくれればいいなと思います。

いずれにせよ、今後、目が離せない新モードになりそうです。

(以上、2021-02-06 記)

運用周波数

インストール後、Setting→Frequenciesとすすみ、周波数の窓で右クリック→Resetして一度初期値に戻した後、国内用の3.531と7.041を追加しました。

Q65のデフォルト周波数は以下のとおりですが、JAのバンドプランから外れている周波数があります。

  • 50.275 →OK
  • 144.116 →通常交信NG(外国の局とのEMEはOK)
  • 432.065 →通常交信NG(EMEはOK)
  • 1296.065 →OK(全電波型式)

HF帯と144/430の国内周波数はどこになるか。PSKReporterを見れば、実際にどこの周波数に出ているかがわかります。だんだん慣習的に決まっていくのでしょうか。

2月7日現在、JA国内では7.037、430.512(FT8用430.510の少し上)で運用している局が見えます。海外では、3.574, 7.074(FT8の周波数)で出ている局がいます。

(以上、2021-02-07 追記)

7件のコメント

  1. 詳細な解説を有難うございます。ローカルでテストしてます。50.275  ローカル版FACEBOOKにシェアーさせてくださいね。

  2. […] 2021年は、なぜかアマチュア無線が一般メディアに取り上げられることが多かったのですが、その多くが「レトロな趣味」と位置づけていたように思います。アマチュア無線衰退の原因をインターネットに求める人もいます。ですが、私たちは、FT8や、昨年公表された新デジタルモード「Q65」といったデジタルモードを挙げるまでもなく、インターネットやパソコンといった最新技術を軽やかに利用し、アマチュア無線の活動の幅を広げてきたのではないでしょうか。アマチュア無線には、もっと大きな可能性が秘められていると、私は信じています。 […]

  3. […] (5) 個人的なアマチュア無線活動は浅く広くという感じですが、JT65以降のデジタルモードや、D-STARやDMRといった新しい技術についてはそれなりに勉強しているつもりです(例:新デジタルモード「Q65」)。実は無線機の素人修理も好きだったりします(TM-702、TM-741S、RJX-601等)。皆さんのご参考(と自分の備忘録)になればと思い、できるだけ詳しいブログ記事を残すようにしています。 […]

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