JARL選挙立候補に当たっての所信(2020年関東社員)

私、7K1BIB 山内貴博 は、2020(令和2)年のJARL選挙において、関東社員(関東地方本部区域毎の社員)の候補者として立候補致しました。貴重な一票を私にお託し下さい。ご支援のほど、何卒よろしくお願い致します。

JARL指定の選挙公報では、以下のとおり、所信を3点にまとめました。

①電波法規制の緩和②JARL運営の正常化弁護士24年の知識経験を投入し本気で取り組みます③アマチュア無線の裾野を広げる活動に力を注ぎます。」

それにしてもこの選挙公報、欄が小さすぎます。9cm✕9cmの欄で思いを尽くすことはできません。少し長くなりますが、私の所信を聞いて下さい。

①電波法規制の緩和

本年1月17日に、アマチュア無線に関する法規制の緩和案がパブコメに掛かりました。改定案を私なりに読み解いた記事をこちらに、私が提出したパブコメ意見をこちらに載せました。

法制度の改正には「法改正の理由」(法律用語で言うと「立法事実」)が必要です。アマチュア無線について、民側が行うべきことは、まず、日頃からアマチュア無線家の要望を広く集め、これを優先順位に従い整理しておくことだと思います。これが「立法事実」に該当します。次に、この要望と、法律・政省令・告示と照らし合わせて改正しなければならない条文を見つけ、総務省に対して、改正の必要性を要請することになります。

しかし、これらの作業は出発点にすぎません。1回の要望で動いてくれるほど、行政府・立法府は甘くはないのです。さらに審議会・懇談会等に働きかける等、法改正の「きっかけの仕込み」を行い、その結果、ようやく行政府・立法府が動いてくれそうになれば、すばやくそのチャンスを捉え、改正条文、新旧対比表の下案や、関係部署との問答の下案を作成するなど、行政担当者の「お手伝い」をしていくことになります。この部分が、法制度改正の実現に向けた本丸中の本丸です。

かつてのJARLは、総務省(郵政省)の担当者への説明や、法改正が必要な場合は議員への説明など、一番大変な部分にも積極的に働きかけを行っていたと想像されます。少なくとも、他の種類の無線局に関係する業界は、みなこういう努力を行って、法改正を実現してきているのです。

髙尾会長は、最近、電波部長に「直接」1通の要望書を渡したことを強調していますが、それがいかに現実にそぐわないかは、こちらの記事に詳しく書きました。本来JARLが果たすべき役割の一丁目一番地においてこのような説明がなされていることは、とても痛々しく感じます。1片の要望書は出さないより格段にましですが、それだけで法改正が実現するものでは決してないのです。

私は、1996年に弁護士の資格を取得し、以来24年間、法律実務に携わってきました。その間、行政府に外から働きかけるだけでなく、経産省や特許庁の審議会・研究会の委員など、制度改正にも深く関わってきました。

また、アマチュア無線関連のパブコメ募集に対しては、以下のとおり積極的に意見を提出しています。

私は、弁護士としての経験を生かして、アマチュア無線に関する重すぎる法規制の緩和・合理化に、積極的に携わっていきたいと考えています。

他方で、実は現行制度下でも、昔とくらべてかなりの規制緩和が進んでいます。たとえば、局免許の記載事項に変更がない限り、技適機種であれば、買ったその瞬間から(店を出たら)使ってかまわない(軽微な変更として「遅滞なく届出」すればよい)のですが、意外と知られていません。総通の審査が遅いとフラストレーションをためる人を少しでも減らすために、JARLは、法制度に関するわかりやすい説明、啓蒙活動を積極的に行うべきです

②JARL運営の正常化

昨年6月の社員総会に、社員有志17名から、髙尾義則JARL会長及び日野岳充専務理事を解任する社員提案がなされたことは、皆様の記憶に新しいことと存じます。私は、関係各書面の原案作成、ウェブサイトの管理などのお手伝いをしておりましたhamlife.jpに名前が載ってしまいました。)。なお、私は弁護士としての知見をこの活動に惜しみなく投入しましたが、私ごととして活動しましたので、弁護士報酬は一切頂いていません。理事・社員有志(現在の改革派/改革集団)の皆さんや、JI1DWB大矢浩理事といった、心ある方々と知り合えたことが、何よりの報酬でした。

この「有志」の活動を通じて、現在のJARLの運営がおかしなことになっていることを知りましたが、2019年6月23日の社員総会において、解任議案が遺憾ながら半ば強行採決の形で否決されたその後、さらにJARLの運営がおかしなことになることを、当時は知るよしもありませんでした。

社員総会からおよそ1ヶ月後、大矢理事より、10個を超える議案がJARL理事会に提案されることが公表されました。それは、前項で述べた電波法規制の緩和に関するJARLの役割を明確化するための議案であったり(議案1、2、8)、JARLの運営を適正化させるものであったり(議案3、4、5、6、9)、アマチュア無線家の要望に応えようとする議案であり(議案10、11)、そのいずれもが、当然可決されるべき重要なものでした。しかし、2019年9月と11月に開かれた理事会で、髙尾会長(全国)、日野岳専務(推薦)、森田副会長(四国)、原副会長(全国)、島田理事(関東)、尾形理事(東北)、正村理事(北海道)及び髙橋理事(信越)の8名の反対により、大矢理事の提案は、ほとんどが否決されてしまったのです。

わたしは、この8名の理事がこれらの決議に反対したことにとても驚きました。そして、なぜ反対したのか、文字どおり幾晩も考えたのですが、その理由は未だに想像がつかないのです。これらの決議に反対したということは、JARLの運営適正化を拒否し、アマチュア無線家の要望を聞かずに独善的に事業をすすめることを意味します。これが、会長がよくいう「会員皆様ファースト」の真意なのでしょうか。

理事は、業務執行を司る会長・専務理事を監督する役職であり、会長に盲目的に従うのではなく、時には会長を諫めないといけない役職なのですが、8名の理事全員が大矢理事の議案への反対で固く一致していたのでしょうか。少しでも良心の呵責を感じた方は、いらっしゃらないのでしょうか。もしいらっしゃるのでしたら、私は是非、その方とお話をしてみたいと思います。

私は、弁護士業務の一環として、業界団体や慈善団体の評議員の経験があり、スポーツ団体の不祥事を調査する第三者委員会の委員長を務めたこともあります。今のところは、JARLに対し第三者委員会の手法を用いる必要まではないと考えていますが、社員に当選させていただいた暁には、法が一般社団法人の社員に認めた権利・権限を最大限に生かして、JARL運営の正常化に向けて、力を尽くしたいと考えています

③アマチュア無線の裾野を広げる活動

私は、DXerを尊敬しています。DXCCのオナーロールは、時間だけでなく、高度な通信テクニックがなければたどり着けない高い山でしょう。1kW局の開設・維持は、アマチュア無線に対する熱意だけではなく、技術力も必要に違いありません。

一方で、高い山には広い裾野が必要だと思います。私は、いつか高い山に登れることを夢見つつ、今は、以下のような、アマチュア無線の裾野を広げる活動に取り組んでいます

(1) 5年前、法学部時代からの恩師が実はアマチュア無線家であったことを知り、法律家で構成されるクラブ「無線通信を愛好する法律家協会(JQ1ZOR。略称「無法協」)」を立ち上げ、私は、同クラブの事務局長を務めています。3人から始まったクラブが、今は50名を超える所帯に成長しました。アマチュア局を(再)開局したり、上級資格を取ったりするメンバーも多い一方で、法律科のクラブらしく、電波法やJARLの現状等についても、活発な議論を行っています。

私の出馬にあたり、無法協会長の伊藤眞先生(7M1XBH、1アマ2総通、東京大学法学部名誉教授)と、無法協会員である弁護士の鶴巻暁先生(JR8WOW/1、上條・鶴巻法律事務所共同代表)にご推薦を頂きました。将来、無法協のメンバーには、①電波法規制の緩和や②JARL運営の正常化に、法律家としての協力をお願いしたいと考えています。

(2) 理事・社員有志の活動に際し、貴重な意見を寄せてくれたDaisukeさん(JA1UMW)と知り合うことができました。彼は秋葉原無線部(JS1YCP)の主宰者。同人イベントの視点からするとハムフェアは出展料が高すぎるし、個人で出店できないのでハードルが高い、JARLが本気でアマチュア無線家を新規開拓したいのなら、内輪のイベントばかりではなく、コミケとは言わないまでも秋コレMaker Faireといった隣接イベントに出展するべき等々、なるほどと思わせるアマチュア無線界の改善点をバシバシと指摘してくれています。ウサ耳がついている容貌に少し驚きますが、昔はマキ電機に出入りしていた本格的技術派でもあります。私のブログ・ツイッターのアイコンは、Daisukeさんに生まれて初めて連れて行かれたアキバのメイド喫茶のオムライスなのです(笑)。

私としては、こういう「動ける若手」の皆さんの意見をどんどん取り入れていくJARLにしたいと思っています。秋葉原無線部からは、Daisukeさんと、今回、ともに関東社員に立候補している若手の新人、JI1RKA板橋直樹(姫崎桜把)さんからご推薦を頂きました。どうぞ、板橋さんにも応援をよろしくお願いします。

(3) このFT8の時代にあって、JT65など、少し前ののんびりしたデジタル通信を楽しむFacebookグループ「JT65/JT9/T10 Loversを、7K1VKU福士さんと立ち上げました。短波帯の電波伝搬の日変化・年変化を教えてくれ、私を南極(8J1RL)まで連れて行ってくれたJT65等は、初心者を含む弱小無線家にやさしいモードであり、この火を絶やしたくないと思っています。

(4) 7L4XQIけんけんさんは、敢えて駅前のビルの谷間からハンディ機でオンエアし、意外にも遠方と交信できることをTwitterで報告されていました。この活動に刺激を受けた私も、真似して駅前からのオンエアを始め、けんけんさんに「#駅前QRVというハッシュタグを進呈しました。ハンディ機1台で、初心者の方にもベテランにも、手軽に意外な伝搬を楽しんでいただける「#駅前QRV」は、今、Twitter界隈で、静かなブームとなりつつあります。

(5) 今年は、いわゆる「7コール」の発給が開始された1990年からちょうど30周年の年に当たりますこれを記念して、7M4VQJ山口さんを中心に結成された7コールアマチュア無線クラブ(JS1YEY)に、私も7コールの一員として参画しています。このクラブは、「開局当時のワイワイ感をもう一度」、「7コール」をテーマにアマチュア無線界の振興を促進し、ひいてはかつてアマチュア局が激増した時代の仲間を呼び戻すことも目標に、活動していく予定です。

個人と個人が力を合わせるこうした草の根的な活動は、アマチュア無線の裾野を広げ、その普及と発展に必ず貢献できると私は信じています。JARLは、元来、「日本最大のアマチュア無線クラブ」として、こうしたひとりひとりの活動の集合体だったはずです。会長ばかりが目立とうとするJARLではなく、アマチュア無線家ひとりひとりが活躍できる「場」を提供するJARLにするにはどうしたらよいか、皆さんとともに考えていきたいと思います。


以上、すみません長々と、私の「思い」を読んで下さりありがとうございました。ここまで読んで下さった皆様は、「それはいいけど、BIBが当選したところで所詮は、一社員。どうやってJARLは変わるのか?」と思われたかも知れません。そうした点については、今回のJARL選挙への立候補者がすべて出そろったのちに、別項を立ててお話ししたいと思います。

なお、私の無線家としてのプロフィールはこちらを、法律家としてのプロフィールはこちらをご覧下さい。

(2020-02-17 記)

5件のコメント

  1. なーるほど。選挙権の無い当局です。7K1BIB局が #JARL会長になられたとすれば、すべて風通しが良くなるだろう? と思い始めました。JARLの資金繰りは取り崩し。#アマチュア無線 国際の仕事が、何時・停止しても、おかしくない状態。早く、正常に戻さねば。JS2GAO

    • 所信をお読み下さりありがとうございます。会長なんて滅相もない。「電波法制度検討委員会」のような実務側なら参加したいです。ともかくひとりでは何もできないので、皆で作り上げるJARLに変えていくきっかけを作りたいと思います。選挙権のある方にご紹介いただけましたら幸いです。

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