【祝】アマチュア無線規制緩和2020

アマチュア無線に関する大幅な規制緩和が、2020年1月17日にパブコメに掛かりました。

無線局免許手続規則の一部を改正する省令案等に係る意見募集
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban14_02000416.html

規制緩和の柱は、以下のとおりです。

① 免許手続きの簡素化
② 無資格者の利用機会の拡大
③ 周波数の追加割当て
(④ 200W超えのスプリアス確認保証)

法制度の改正には「法改正の理由」(法律用語で言うと「立法事実」)が必要です。ある意味当たり前ですが、改正する理由がない限り、法制度は変更されません。

今回は、2019年11月にパブコメに掛かった「電波有効利用成長戦略懇談会追加提言」で、IoT人材の育成の文脈でアマチュア無線について触れられ、「アマチュア無線の資格を持たない青少年等が有資格者の下でアマチュア無線を一時的に体験できるようにする」ことが提言されたことを「法改正の理由=立法事実」として「② 無資格者の利用機会の拡大」を実現するという「きっかけ」が生まれ、これをテコに(「ついでに」)①③④も盛り込むことが企図され、役所内の関係各部署との熾烈な調整を経て、ようやく実現したものと思われます(本業での経験に基づく想像です。)。

このような「きっかけの仕込み」と「関係各部署との調整」が、法制度改正の実現に向けた本丸中の本丸であり、かつてのJARLは、総務省(郵政省)の担当者への説明や、法改正が必要な場合は議員への説明など、一番大変な部分にも積極的に働きかけを行っていたのだろうと思います。1片の要望書は出さないより格段にましですが、それだけで法改正が実現するものではないのです。

① 免許手続きの簡素化

待望の、デジタルモードに関する手続きの簡素化です。

・あのややこしい「附属装置の諸元」が不要に(別添1)。
←革命的な規制緩和です。リグが増えても、今後新しいモードが登場しても、手続き不要になります。ただし、局免記載の「電波の型式」欄[2020-02-13修正]に、やりたいモードの電波型式(「F1D」や「G1B」など)が含まれているかを、各バンドごとに確認が必要です。一括記載コードに含まれない電波型式として明示されていればわかりやすいのですが、一括記載コードの中にも「F1D」(JT65系)が隠れたりしていますので注意が必要です。[2020-02-13追記]

・ただし、初めてデジタルモードを始めるときに「届出」を1回は出すことは、さすがに必要です(別添2:軽微な事項告示)。
←正確には、デジタルモードを先に始めて、慣れてから「遅滞なく届出」(電波法9条1項但し書き、同2項)すればOKです。別添9は「デジタルモードのため附属装置(PC)を接続」という文言例を挙げていますが、CWは「デジタルモード」ではないので、「FMでCW」とかやりたい方は、「モールス通信及びデジタルモードのため附属装置(PC)を接続」と書いた方が正確かも知れません。

・すでにデジタルモードの「届出」を済ませている方は、何ら手続き不要です(別添8、6(10)の「なお」書き)。
←「デジタルモードのため附属装置(PC)を接続」と書かれていると「みなす」とは、なんと大胆な立法テクニックかと。

私は、自分で作った表形式の附属装置の諸元表を使っていましたが、今後は今回の規制緩和が施行されれば[2020-02-02訂正]不要ですね。「成仏」のためにおいておきます。お疲れさまでした→( 送信機系統図_附属装置の諸元内容等_ひな形

② 「体験臨時局」制度の創設

WTL局ご提案の「体験臨時局」という略称を私も使いたいと思います。

「市民祭り」のような公的なイベントにクラブが出展し「社団局」を公開運用している中で、見ている一般の方を「ねーねーちょっとしゃべってみる?」と誘い、そのときだけ「体験臨時局」に化ける、というイメージですね。今まで、社団局同士の設備共用は認められていませんでしたが、今回は、体験臨時局と社団局の設備共用が認められたのが画期的です(もちろん事前に、「社団局」とは別の「体験臨時局」の局免取得が必要です。)[2020-02-02追記]。これを突破口に、設備共用がさらに緩やかに認められるようになる(同一常置場所要件の撤廃等)とありがたいと思いますが、将来の課題ですね。

「連絡の設定及び終了」は有資格者がやらないといけない(別添7)ので、実際の運用はこんな感じでしょうか。

有資格者A:「CQCQCQ こちらは8JnYxx 体験臨時局ですどうぞ」
相手方 :「8JnYxx。こちらは7K1BIB Calling You!」
有資格者A:「7K1BIB こちらは8JnYxx。では今から体験者に交代します」
無資格者B:「えっと、7K1BIB こちらは8JnYxx。ふぁいぶないんです。私の名前はBです。どうぞ。」
相手方 :「了解。8JnYxx こちらは7K1BIBです。はじめまして。こちらからも、シグナルレポート59をお送りします。私の名前はやまうちです。お返しします。8JnYxx。こちらは7K1BIBです。どうぞ。」
無資格者B:「りょーかい。7K1BIB こちらは8JnYxx。ふぁいぶないんのれぽーとありがとうございました。はじめて無線で話しています。どうぞ。」
相手方 :「Bさん、とっても上手ですよ。ぜひ無線の免許取ってみて下さい。どうぞ。」
無資格者B:「りょーかい。やまうちさん、ありがとうございました。今からAさんに代わります」
有資格者A:「7K1BIB こちらは8JnYxx。体験交信のお相手ありがとうございました。さようなら。」
相手方 :「了解。8JnYxx こちらは7K1BIBです。こちらこそありがとうございました。さようなら。」

無資格者B:「緊張したけど楽しかったです。もっとやりたい。無線の免許とろうかなあ」

アマチュア無線普及のために、体験臨時局制度を大いに利用しましょう。

「体験臨時局」のコールサインは「8JnYxx~Zxx」で、順番に自動的に割り当てられる(希望はできない)とのことです(CO誌2019年5月号52ページ)。上記シナリオの「JS1Yxx」を「8JnYxx」に書き換えました。(2020-04-16 追記)

③ 周波数の追加割当て

追加割り当て
(別添9より引用)

・拡張された部分は「全電波型式」なので、1.8MHz帯でSSB開放です!

・ただし、一括コード「3MA」にJ3Eは含まれないので、J3Eを追加する局免の変更申請が必要です。

・しかも、現行リグは1.8MHz帯でJ3Eの技適を通していないことから、JARD/TSSの保証が必要になると思われます。今まで1.8MHz帯でJ3Eは想定されていなかったのですから、技適から外れていることはどうひっくり返っても仕方のないことです[注:下記、2020-02-02追記をご参照]。「JARDの金儲けネタが増えた」とかいう批判はやめて、落成検査が省略できる保証制度に感謝しましょう。

バンドプランは、告示で決められた内容とJARLが制定した内容のハイブリッド構造です。告示は、再び改正してもらうのが大変ですし(JT65で苦労したことをご記憶の方も多いでしょう)、細かい違反で行政処分をくらうリスクもあるので、何でもかんでも告示でお上に決めてもらうのがよいとは思いません。「全電波型式ではなくCWに限るべき」、「Phone部分は限定すべき」といった意見もあると思いますが、これを総務省にパブコメに言っても当惑させるだけだと思います。アマチュア無線界としては、そういう細かい話まで総務省に決めてもらうのではなく、「民間の自主規制」、つまり、JARLが「推奨周波数」を設けるとか、アマチュア無線界内で「よく使われる周波数」のような情報として出回るようにするのがよいと思います。

(以上 2020-01-20 記)

通りすがり」さんからコメントを頂いたのでさらに考察してみました。

いわゆる技適(正確には技術基準適合証明)を受けた機器は、電波利用ホームページの「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」ページで検索できます。試みに、手持ちのFT-857DMとIC-7300Mを検索してみました。

登録証明機関による工事設計認証に関する詳細情報
工事設計認証番号 002-140009
工事設計認証をした年月日 平成27年1月19日
工事設計認証を受けた者の氏名又は名称 八重洲無線株式会社
工事設計認証を受けた特定無線設備の種別 第2条第12号に規定する特定無線設備
工事設計認証を受けた特定無線設備の型式又は名称 FT-857M
電波の型式、周波数及び空中線電力 A1A 1.810~1.825MHz 50W
A1A 1.9075~1.9125MHz 50W
A1A,A3E,J3E 3.500~3.575MHz 50W
A1A,A3E,J3E 3.747~3.754MHz 50W
A1A,A3E,J3E 3.791~3.805MHz 50W
A1A 4.63MHz 50W
A1A,A3E,J3E 7.000~7.100MHz 50W
A1A 10.100~10.150MHz 50W
A1A,A3E,J3E 14.000~14.350MHz 50W
A1A,A3E,J3E 18.068~18.168MHz 50W
A1A,A3E,J3E 21.000~21.450MHz 50W
A1A,A3E,J3E 24.890~24.990MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F2A,F2D,F3E 28.000~29.700MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F2A,F2D,F3E 50.000~54.000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F2A,F2D,F3E 144.000~146.000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F2A,F2D,F3E 430.000~440.000MHz 20W
スプリアス規定 新スプリアス規定
BODY SAR
備考
登録証明機関名 (一財)日本アマチュア無線振興協会
登録証明機関による工事設計認証に関する詳細情報
工事設計認証番号 002-150007
工事設計認証をした年月日 平成28年1月22日
工事設計認証を受けた者の氏名又は名称 アイコム株式会社
工事設計認証を受けた特定無線設備の種別 第2条第12号に規定する特定無線設備
工事設計認証を受けた特定無線設備の型式又は名称 IC-7300M
電波の型式、周波数及び空中線電力 A1A 1.800000~1.999999MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B 3.500000~3.999999MHz 50W
A1A 4.63MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B 7.000000~7.300000MHz 50W
A1A,F1B 10.100000~10.150000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B 14.000000~14.350000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B 18.068000~18.168000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B 21.000000~21.450000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B 24.890000~24.990000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B,F3E 28.000000~29.700000MHz 50W
A1A,A3E,J3E,F1B,F3E 50.000000~54.000000MHz 50W
スプリアス規定 新スプリアス規定
BODY SAR
備考
登録証明機関名 (一財)日本アマチュア無線振興協会

これらの機種では、1.8/1.9MHzではA1Aの技適しか通してませんので、技適の範囲を超えるJ3EについてはJARD/TSSの保証が必要になる・・・というのが厳格な取り扱いということになりそうです。ですが、

(1) 通りすがりさんご指摘の点、つまり「送信機の音声入力端子に付属装置を接続する(音声の変調回路を使う)デジタルモード」は、F1B(RTTY, JT65, FT8等)であったりF1D(JT65, FT8等)[2020-02-13訂正]であったりG1B(PSK31)であったりF3C(Fax)であったりするところ、これらは技適の範囲を超えますが、現在でも、保証は要らず、(局免に変更がない限り)総通への直接届出でよいと扱われています。
(2) (IC-7300Mはともかく)FT857DMは、7.100MHzを超える部分は技適を得てないようですが、増設の際に7.200MHzまで含むものとして何も問題にならなかったと記憶しています。
(3) いずれの無線機も4630KHz/A1Aは技適を通ってないのですが、局免上は4630KHz/A1Aの指定を受けています。[2020-02-12訂正:いずれも「A1A 4.63MHz 50W」堂々と技適受けてますね。我が目は節穴か・・失礼いたしました。]

これらはいずれも、何かきちんと理屈があってOKとされてきたのかも知れませんが、「お目こぼし」でOKとされてきたということかも知れません。(2)は、7MHz帯拡張の際に、7メガの免許を受けていれば拡張部分について指定事項の変更申請を不要とする「みなし」経過措置が執られていましたので、技適についても「まあいっか」と考えられてきたのもしれません。

1.8/1.9MHzのJ3Eについても、「デジタルモードのような応用モードはお目こぼしできるが、J3Eのような基礎モードは別だ」といわずに、増設、変更を問わず、(1)にならって「お目こぼし」の扱いがされるとありがたいですね。

(以上 2020-02-02 一部訂正・追記)

【祝】アマチュア無線規制緩和2020」への8件のフィードバック

  1. 通りすがりの者ですが、気になりましたので。

    > ・しかも、現行リグは1.8MHz帯でJ3Eの技適を通していないことから、
    > JARD /TSSの保証が必要になると思われます。

    ご存じとは思いますが、現在、送信機の音声入力端子に付属装置を接続(音声の変調回路を使う)するデジタルモードの手続では、総通直接で手続きでOKです。1.8MHz帯においても何ら問題なく手続きができます。
    まして、付属装置すら接続不要のJ3Eは、当然、保証認定不要で総通直接申請で許可されると考えるのが自然です。いかがでしょう?
    もっとも、当局がどう判断するかにかかっていますけど。

  2. 通りすがりの者です。

    先ほどのコメントの追加説明。

    新規の場合は、現行のデジタルモードと同様に、J3Eの追加も保証認定が必要だと思います。
    「変更」の場合には、J3Eを追加する場合も現行のデジタルモードの追加手続きと同様に、総通直接手続きで許可されると考えます。

    「新規」・「変更」にかかわりなく、保証認定なしで総通直接で受け付けてくれるようになると、ありがたいですね。

  3. 先日、コメントした通りすがりの者です。

    1.8MHz帯の「全電波型式」の使用区分で使用可能な
    電波型式について、自分なりに考察してみました。

    1. 結論
    1.8MHz帯の使用区分「全電波型式」で、
    電話ができるようになるという話は「ぬか喜び」。
    2. 理由
    (1) 今回の改正案に電話が可能となる記載がないこと。
    1) 今回の拡張はデジタルモードで海外と交信できる
    周波数割り当てを行うことが目的なのは明らか。
    2) 電話の事は全く考えていない。
    (2) 今回の改正において電話運用のための改正案がないこと。
    1) アマチュア局において使用する電波の型式を表示する
    記号(一括記載コード)にかかる改正案がない。
    ○ 現在の1.8MHz帯の一括記載コードは3MAと4MAのみ。
    ○ フォーンの電波型式を得るためには「個別指定」が必要。
    2) 無線局事項書様式にかかる改正がない。
    ○ 1.8MHz電波型式の欄でチェックできるのは、
    A1A、3MA、4MAのみ。
    ○ この改正がないと電波型式の「個別指定」すらできない。
    ○ この改正がないと「電子申請・届出システム Lite」
    の改修はできないハズ。
    3.なお
    (1) 1.8MHz帯の使用区分の占有周波数帯幅は、
    3kHz以下か。
    ○ この使用区分の周波数に占有周波数帯幅を制限する
    現行法令および改正案がないため。
    3. よって、1.8MHz帯については、
    (1) 指定可能jな電波型式のはこれまでと変わらず、
    3MA(A1A、F1B、F1D、G1B、G1D)の範囲のまま。
    (2) 一部で周波数区分で200Hz以下の制限は残る。
    (3) 相変わらず電話の運用はできない。
    (4) もしかしたら、本省決裁で電話の許可は可能かも。

    以上になりますが、実際にはどうなりますことやら。

    私は、この年末にデジタルモード+α の
    申請&届出をした際に、ネットと電波法令を参考にして、
    付属装置諸元表をやっとの思いで作成したシロウトなので、
    上記の内容に間違いが多々あるかと思います。

    ついては、電波法令に詳しい方々で、
    今回の改正案をで多角的に論議した上で、
    改正案を評価をすることにより、
    次のステップにつながると思っております。

    では。

  4. ピンバック: 「アマチュア無線規制緩和2020」に対するパブコメ意見 | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

  5. ピンバック: JARL選挙立候補に当たっての所信(2020年関東社員) | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

  6. ピンバック: アマチュア無線規制緩和2020が施行! | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

  7. ピンバック: 【祝】アマチュア無線規制緩和2020が施行! | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

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