【読み解き】「ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正」2023年3月施行部分(その1)

昨年(2022年)11月16日~12月16日 パブコメ募集
 読み解き記事(1) 私が提出した意見

”読み解き記事(2)”を書こうとモタモタしているうちに、総務省からパブコメ結果が発表になってしまいました(汗)。

2023年2月8日 ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正案に対する意見募集の結果及び電波監理審議会からの答申

いつ施行されるの?

3月中の官報掲載と同時に施行される部分と、9月に施行される部分があります。
官報掲載は早ければ3月1日!もうすぐです。

ワイヤレス人材育成のためのアマチュア無線の活用等に係る制度改正案(要旨) より

まずは、3月施行部分を読み解きます。

体験運用の全面解禁

どのアマチュア局でも(=社団局でも個人局でも)、体験運用ができるようになります。

「体験局制度」は残念ながら廃止です。今ある体験局は、局免が切れるまで運用できるはずです(更新はできません。最後まで生き残る体験局はどれでしょうか・・?)。

体験運用シナリオ

資格を持たない人にハンディ機渡して「ほら、CQだしてごらん」はダメです!!最初と最後の連絡設定は、有資格者がする必要があります。

有資格者A「CQCQCQ こちらはJAnXXX アマチュア無線の体験運用を希望している方が待機中です。お相手頂ける方コールください。どうぞ!」
相手方「JAnXXX。こちらは7K1BIB Calling You!」
有資格者A「7K1BIB こちらはJAnXXX。レポートは59、オペレータは●●です。今から体験者に交代したいのですがよろしいでしょうか」
相手方「JAnXXX。こちらは7K1BIB。レポートは59、こちらのオペレータは山内です。体験者のお相手がきること、とても光栄です。もちろんどうぞ。」
有資格者A「7K1BIB こちらはJAnXXX。山内さんですね。では今から体験者に交代します」
無資格者B「えっと、7K1BIB こちらはJAnXXX。しぐなるれぽーとは、ふぁいぶないんです。私の名前はBです。どうぞ。」
相手方「了解。JAnXXX 。こちらは7K1BIBです。はじめまして。こちらからも、シグナルレポート59をお送りします。私の名前はやまうちです。お返しします。JAnXXX。こちらは7K1BIBです。どうぞ。」
無資格者B「りょーかい。7K1BIB こちらはJAnXXX。ふぁいぶないんのれぽーとありがとうございました。はじめて無線で話しています。好きな食べ物はなんですか?どうぞ。」
相手方「私の好きな食べ物はカレーです。Bさん、とっても上手ですよ。ぜひ無線の免許取ってみて下さい。どうぞ。」
無資格者B「りょーかい。やまうちさん、ありがとうございました。今からAさんに代わります。」
有資格者A「7K1BIB こちらはJAnXXX。体験交信のお相手ありがとうございました。さようなら。」
相手方「了解。JAnXXX こちらは7K1BIBです。こちらこそありがとうございました。さようなら。」
無資格者B「緊張したけど楽しかったです。もっとやりたい。無線の免許とろうかなあ。」

青太字の部分が「連絡の設定及び終了」です。この部分を有資格者がやらないと違法です!きっとテストに出ます(笑)。絶対に守ってください。

Q&Aより

総務省の回答から、興味深いものをいくつかピックアップ。

パブコメ意見総務省回答
体験局の8J/8Nコールサインは残して。『特別に国から許可されたアマチュア局を使って体験運用を行うという観点においては、いわゆる記念局(記念コールサイン)の制度を、御活用いただきたいと考えます。』

でも、今後は記念局は厳しくなりそう・・(後述)
モールス符号による体験運用を認めて。『モールス符号による通信は、電気通信術という特別の技術及びその通信に関する条約等の法規上の知識が必要であることから、無資格者にモールス符号による通信をさせることは適切ではありません。電波法第39条第2項の規定においても、無線従事者でなければ行ってはならない操作と定められております。』
施行規則第34 条の10 第1項第2号(臨時に開設するアマチュア局の告示)って?『施行規則第34 条の10 第1項第2号は現行規定のとおりですが、・・・現時点で告示を予定しているものはありません。・・・今後、特別な事例(※2)のとおり、個別具体の案件を告示することが考えられますが・・・』

『※2 特別な事例:平成27 年総務省告示第166 号第1項第23 回世界スカウトジャンボリーの会場内において日本ボーイスカウトアマチュア無線クラブが臨時に開設するアマチュア局について、当該クラブ局の有資格者の指揮の下で、日本と相互承認を結んでいない外国政府のアマチュア無線の資格を有している参加者の当該アマチュア局の無線設備の操作を可能としたもの。』

⇒「特別な事例」のための根拠条文を念のため残しておくということですね。
「連絡の設定及び終了に関する通信操作」は、相手局1局ごとに有資格者が行わなければならないのか。『「連絡の設定及び終了に関する通信操作」は、相手局1局ごとに免許人(有資格者)が行うこととなります。免許人(有資格者)が連絡の終了・連絡の設定を行わないうちに次の局からの交信を体験者が行うことはできません。体験者は連絡の設定後から終了前までの通信操作を行うことができます。』

体験者が「ほかいらっしゃいますか?QRZ?」とかやっちゃダメです。
⇒「有資格者⇒体験者が次々交代⇒有資格者」はOKみたい(ARISS方式)
体験運用を実施するに当たって体験者に報酬や対価を求めてはな
らないと明記すべきではないか。
『一般に、体験運用に当たり必要な実費に相当する額の範囲内であれば問題ありません。』

JARLの役割

体験運用は、経験とノウハウが必要です。「体験運用セット」と「情報交換の場」が欲しいところです。

  • 運用シナリオ
  • アマチュア無線って何?を説明したパンフレット
  • フォネティック表
  • 体験者に渡す「体験証明書」
  • 国試・講習会の案内
  • 体験運用宣伝のぼり  等々

総務省も「また、アマチュア無線界においても、制度の活用や周知広報が行われることが期待されるとともに、アマチュア無線の体験が円滑・効果的になされるよう、その取組のベストプラクティスの紹介や共有、マニュアル化なども期待されているものと考えております。なお、一般社団法人日本アマチュア無線連盟(JARL)からも、周知広報に努めてまいりたいとの御意見をいただいております。」と言ってます。
  ⇒要するに「JARL、やりなさいよ?」ということです。

JARLの実態:体験局制度が始まってからもう3年、執行部は全く動いてません。

昨年11月のJARL理事会で、体験局を熱心に運用している2エリアと3エリアの理事から「体験局・ニューカマー支援委員会」の設置が提案されました。ですが、JG1KTC髙尾会長は、「(尾形理事が委員長を務める)会員増強組織強化委員会が準備する」として、何と新委員会の設置提案を否決しました。

さて、次の理事会が先週末、2月25・26日に開催されましたが、髙尾会長、尾形理事は、ちゃんと「宿題」をやってきたのでしょうか・・。

教育・研究活動での活用

「アマチュア業務」を定義する告示に追加。JJ1WTL本林さん(JARL社員)のこの図がわかりやすいので引用(埋め込みリンク)させて頂きます。

https://jj1wtl.seesaa.net/article/202211article_15.html より

Q&Aより

パブコメ意見総務省回答
「教育又は研究活動」の範囲は?

・学校教育法で定める学校と限定してはどうか。
・無線通信技術に関する教育、研究活動に限定すべきではないか。
・教育活動は学校教育だけでなく社会教育を含むことを明確にすべきではないか。
『一般に、例えば、
・学校の授業中や課外活動(クラブ活動)等でアマチュア無線を利用した実演、実習、実験等を行うこと
・大学等の研究室等での各種の研究への利用など
・学校行事(運動会、学園祭)や研究活動時において連絡に使用すること

などが考えられる』

⇒1点目2点目はともかく、3点目も明確化されたのは大きい。学校クラブメンバーが運動会で通信ボランティアして、みんなのヒーローになれますね。

『一方、学校や研究施設であるからといって、教育又は研究活動に直接関わらない学校や研究施設の運営(施設運営管理等)での連絡に使用することは、アマチュア業務には含まれません。』

⇒当然でしょう。

より多くの電波の利活用の可能性につながることから、学校教育法で定める学校や無線通信技術には限定しないものです。なお、教育活動は、学校教育だけでなく社会教育を含むものと考えます。

⇒誤植発見。学校教育法で定める学校や無線通信技術【に関する教育、研究活動】には限定しない、という意味と思われる。
教育又は研究活動を行う指導者等が所属機関から給与の支払を受けている場合や、企業等から研究費を受けている場合も、「金銭上の利益のため」には当たらず、アマチュア業務に含まれると考えるべき。

↑おそらく私の質問
『教育又は研究活動によるアマチュア無線の使用は、・・・アマチュア局免許人個人が、その意思により「個人的な興味」によって自発的にその活動に携わり無線通信を行うものであり、その無線通信業務がアマチュア業務に含まれることを定義の告示改正により明確化するもの』

教育又は研究活動を行う指導者等が、所属機関から給与の支払を受けていること、企業等から研究費を受けていることのみをもっては、金銭上の利益のために当該無線通信が行われているものとは考えておりません。

一方で、教育又は研究活動であっても、企業等の営利法人等の営利活動のためにアマチュア無線を使用することはできません。

⇒2カ所の青字部分の関係がよくわかりません。「社会教育を含む」というと、大学の一般向け教養講座はもちろん、カルチャーセンターの講座でもOKなように見えますが、カルチャーセンターは「営利法人」が「営利活動のために」運営しているものなので、結局ダメ、ということでしょうか。。
『なお、アマチュア業務の範囲については、個々の案件ごとに、反復・継続性、営利性、組織的利用、通信内容などについて総合的に判断されるものです(なお、営利性は、有償か無償かで判断するものではありません。)。』

⇒「営利性」と言い換えてしまっていますが、条文上は「金銭上の利益のため」か否か。「金銭上の利益」を「有償か無償かで判断するものではない」とはどういうことか、よくわかりません。難しい。

という次第で、「金銭上の利益のため」要件との関係でモヤモヤしたものは残りますが、結論として、教育・研究の指導者が給与や研究費を受けていても、アマチュア無線を利用して問題ないとされたことは、アマチュア無線の利用価値を高めるものとして歓迎すべきことと考えます。

以下、(その2)に続きます。。

(2023/02/28 記)

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