JARLの財政について(JARL選挙所信その3)

JARLの赤字

2016年6月に髙尾氏がJARL会長に就任してから3年間(つまり2018年度まで)に生み出されたJARLの赤字は、実に2.4億円に達していますJJ1WTL本林さんの有名なグラフをご覧下さい(2019年社員総会に提出されたWTL局の準備書面の冒頭部分)。2019年度は進行中ですが、黒字転換することなどあり得ないでしょう。

この赤字は、JARL会計上、「一般正味財産」、いわゆる内部留保の取り崩しにより補填されています。一般正味財産の残高は、一般社団法人の発足時(2011年)は12億7000万円もありましたが、毎年取り崩された結果、2018年の時点で7億8000万円まで減ってしまいました。このまま行けば、いずれ、内部留保は取り崩され尽くして、JARLの財政が破綻することは目に見えています

髙尾会長はプレゼンの中で、悠長にも「近未来に破綻することはございません。」と断定していますが、何の根拠も示されておらず、無責任と言わざるを得ません(あるいは、「近未来」とは、「自分が会長の間は」という意味でしょうか。)。

2020年2月9日JARL東京都支部大会での髙尾氏プレゼンより。

決算に関する公開情報

ところで、JARLは、本当に毎年何千万もの赤字を計上しなければ、やっていけないのでしょうか

正確・緻密な分析は、内部資料をみる必要がありますが、ここでは、公開情報(https://www.jarl.org/Japanese/4_jarl/johokokai.htm )から、ある程度の検討を試みてみます。

JARLの2018年度の「正味財産増減計算書」を見ると、経常収益(収入)は約3億8000万円、経常費用(支出)は約4億6000万円です。つまり、赤字です。

経常費用(支出)は、「①会員事業費」「②刊行物事業費」「③管理費」の3つの「事業」に振り分けられていますが、それぞれの「事業」にどのような基準で振り分けられているのか不明です。見かけの数字を小さく見せるために敢えて正体不明の3事業に振り分けているのでは?とすら思えるので、これを細目毎に合算し、全体の支出(約4億6650万円)に対する各細目の割合を表にしてみました。

赤色で塗った項目は、特に多額な項目で、支出内容の再検討が必要と私が考えるものです。他方、青色で塗った「地方本部費」(支部費も含まれます。)は、支出全体からするとわずか3.7%にすぎないことがわかります。JARLの支出は、いかにJARL本部に偏っているかが分かります。また、ときどき、地方本部や支部の統合・廃止論を聞きますが、経費削減という点では、効果はあまり期待できないこともわかります。むしろ、地方本部や支部は、これだけの少ない予算で、その地方に見合ったアマチュア無線の振興策を実行していらっしゃるのであり、そのボランティア精神には、一無線家として感謝に堪えません。(この段落は2020-03-10 07:30に追記。)

他方、収入は、①資産運用益(350万円)、②入会金(2300万円)、③会費(3億0300万円)、④事業収益(2800万円)、⑤雑収益(5000万円)で構成されています。JARLは③会費収入に大きく依存している組織であることがわかります。②の入会金収入もなかなか大きいのですが、アマチュア人口のみならず日本の人口が減少していることを直視すれば、やたらと入会キャンペーンを行って②の入会金収入を増やそうとする姿勢は改めなければなりません。JARLの事業・存在価値を高めていきながら、結果として入会者が増えれば良い、程度に発想を転換すべきです。

刊行物収益

④事業収益の2800万円という数字は、アワードや開局用紙、標準QSLカードなど刊行物の売り上げを集計した数字のようです。一見健闘しているように見えますが、支出に「刊行物」として上がっている900万円がおそらくこれに見合う経費であり、さらに、刊行物の企画・発送等に携わっている事務局の人件費(諸給与)、刊行物の郵送費(「通信費」200万円の一部?)など、経費を差し引いたものが、JARLが獲得する利益と考えなければいけません。「2800万円」という数字を見ているだけでは不十分で、実質利益が出ているのかの検証が必要ですが、JARLの公開情報はそのような検証の役に立ちません(→末尾の追記部分参照。2020-03-10 07:30)

ハムフェア

⑤雑収益の5000万円も目立ちますが、この中には、ハムフェアの会場整理費収入、ライフメンバーのカード転送手数料、保険事務代行手数料等の雑多なものが投げ込まれているようです。他方でハムフェアの支出は、「広報活動費」に含められているようです。ハムフェアの収入と支出が対応する形で公表されていないために、ハムフェアが赤字なのか黒字なのか、赤字なら、ブース背面の壁を省略する、ラジオ番組収録のための臨時スタジオは廃止する等の経費節減はできないのか、黒字なら、クラブブース出店料を値下げできないのか等の検討ができません。この点でも、やはり、JARLの公開情報は役に立ちません

人件費

さて、支出の側を見ていきましょう。最も大きいのは諸給与(20.12%)ですが、労働法の観点から人員削減は簡単ではないのでひとまずおいておきます。その上の役員報酬900万円が目立ちますね。専務理事ひとりが、JARL支出のうち2%弱を持って行くというわけです。働いてもらわないといけません。

QSLビューロー(交信証明のありかた)

次に多いのはQSL費(QSLカード転送費)です。実に7500万円、全体予算の16%を占めています。この経費は、③会費(3億0300万円)の一部と、⑤雑収益に投げ込まれているライフメンバーのカード転送手数料でまかなわれていると考えられます。私は、QSLビューローはアマチュア無線界のインフラなので、ビューロー単独で黒字を出す必要は必ずしもないと考えますが、収支を対比させた上で、「ここの会員が支払っている会費のうち、いくらをビューローの経費に回すことが、会員の納得を得られるか」、「毎回『靴箱』を受け取っている会員から、年に数枚しか受け取らない会員まで、同額の経費負担で良いのか」、「たとえば年1回の配送で良いという選択肢を設ければ、郵送料を削減できないか」、「カードを配送する封筒に広告を入れれば、広告収入が得られないか。」といった検討をすべきと考えます。この点でも、やはり、JARLの公開情報は役に立ちません。

なお、QSLカードについては、そもそも、紙カードの交換を負担に思うアマチュア無線家が増えているのではないか、紙カードを交換できないからオンエアを躊躇するのでは本末転倒ではないか、IARUが環境問題の視点から紙カードの削減を訴えていることをJAとして受け止めないといけないのではないか、電子QSLを導入することでビューロー経費を本当に削減できるのか、既存の電子QSLシステムやログソフトとのコラボはできないか、といった課題が山積みです。私は、「電子QSL委員会」という小さな枠組みではなく、「交信証明のあり方について」といった大きな視点で検討する検討委員会をJARLに設置し、アンケート等を通じてアマチュア無線界の英知を結集して、総合的に検討しなければならない時期に来ていると考えます

JARLニュース(情報提供活動のあり方)

次に大きいのはJARLニュース費の3500万円であり、実に支出の7.5%を占めています。紙JARLニュースが年4回の刊行になった時点で、速報性は失われています。たとえば、地方本部・支部の行事を掲載している「地方だより」と登録クラブの行事を載せている「CLUB NEWS」は、JARL Webにも(PDF版ですが)掲載されているばかりか、紙ニュース刊行後の「追加行事」はJARL Webにしか掲載されていません。そこで、行事を紹介する部分を全面的にWebに移行すれば、(2020年春号でいえば)130ページのうち42ページを削減できます。Webならカレンダー形式にすることもでき、格段にわかりやすくなるでしょう。

また、コンテストの結果発表ページは、紙ニュースよりもWebの方が全参加局が掲載されており、詳細です。理事会等の情報が掲載されている「JARL INFORMATION」のページも、すべてWebに掲載されています。

このように各ページを検討していくと、紙ニュースでしか読めない記事は、真ん中のカラーページ部分だけであったように思われます。ですが、最近、何と、真ん中のカラーページ部分が無料公開されてしまいました。この結果、紙JARLニュースの価値はほぼなくなったと言っても過言ではないと思います(なお、JARLニュースのウェブサイトへの掲示については、JARL理事会において、会員のみの公開とするか非会員にも公開するか、その範囲と効果等について検討されたことがあるそうです。にもかかわらず、今回の特集部分の大公開は、理事会に諮らず、髙尾会長と日野岳専務理事が独断で行ったようです。その意図は、公開が選挙の直前であったこと、最近の特集記事にやたら髙尾会長ばかりが登場することからすれば、察しがつくように思います。)。

以上の検討から、3500万円の支出を削減するために、思い切って紙JARLニュースは休刊にし、JARLの情報提供活動はウェブサイトに全面移行してもよいのではないでしょうか(2019年6月の社員総会の日野岳専務理事の答弁によれば1000万円の広告収入があるそうですが、Web版でも広告は載せられます。)。JARLニュースの休刊を提案すると、「高齢者の方に優しくない」との声を聞きます。しかし他方で、紙JARLニュースは字が小さくて読みにくいので、字の大きさを変えられるウェブサイトの方がありがたいという声も聞きますし、そもそも、今のご高齢者の方がウェブサイトすら閲覧できないと決め打ちするのは、失礼も甚だしいものの見方ではないでしょうか。何かの思い込みで決め打ちせず、JARLニュースという狭い視点ではなく、会員がどのような情報を求めているのかも含め、「JARLの情報提供」事業全般について、検討委員会を設置し、いちど、アンケートを取る必要があるのではないでしょうか

まとめ

現在、経常赤字の補填に使われている「一般正味財産」(いわゆる内部留保)は、かつてアマチュア無線が盛んだったころに、特に終身会員の方が一括で納めて下さった会費の残高であるとの指摘もあります。ですので、内部留保の一部が今の経常費用の補填に使われることを、私はあながち否定はしません

ですが、以上大雑把に分析したように、JARLの各事業(大きくわけると、①情報収集・提供事業、②電波法制検討、技術研究、次世代育成事業、③本部事業(ハムフェアなど)、④地方本部・支部事業、⑤刊行物等販売事業、⑥交信証明事業、⑦会員管理事業といった感じに分けられるでしょうか。)ごとに、収入と支出、費用対効果を見ながら、会員からお預かりした会費をいかに大切につかうかを、検討することが必要ではないでしょうか。現執行部が、垂れ流された赤字の補填のために内部留保を闇雲に使っているから、おかしなことになっているのではないでしょうか。

実は、昨年2019年の社員総会の直前に社員有志21名が全社員に送られた通知文には、

髙尾会長・日野岳専務理事が解任された後には、「財政検討委員会(仮称)」を立ち上げ、否決された決算案を精査し、「①JARL存続の危機」防止に向けて、是正を図りたいと考えています。

との一節がありました。私は、「財政検討委員会(仮称)」が設立されれば、そのメンバーに立候補し、以上のような、JARLの存続に向けた財政の大幅見直しを行いたいと思っていました。

他方、現会長は、以下のように、JARLニュースもQSLカード転送も見直す気は全くないようです

2019年11月10日JARL神奈川ハムのつどいでの髙尾氏プレゼンより。

そればかりでなく、現執行部(髙尾会長・日野岳専務理事)は、2020年の予算案として、またもや6000万円の赤字予算案を2月理事会に提出しました。2019年度予算より2200万円も赤字が膨らんでいます。あり得ない数字であり、7人の理事が反対票を投じましたが、髙尾氏(全国)、森田氏(四国)、原氏(全国)、日野岳氏(推薦)、島田氏(関東)、尾形氏(東北)、正村氏(北海道)、髙橋氏(信越)、前川氏(北陸)の賛成により可決されてしまいました

JARLにおいて現体制が続く限り、財政改善は無理です。折しも、JARL選挙が行われます。JARL会員の皆様におかれましては、JARLの将来を真剣に考えている候補者は誰なのか、どうか、適切に見極めて頂きたく存じます。

(2020-03-07 記)

読み返してみて、「JARLの公開情報はそのような検証の役に立ちません」との表現が誤解を招きかねないと思ったので補足します。この表現で、私は検証を放棄したといいたかったのではありません。JARLの現執行部(髙尾会長及び日野岳専務理事)は、当初から赤字予算を立てているだけでなく、期末には、赤字幅が拡大している決算を平然と作成しています。JJ1WTL本林氏の名言を借りれば、現執行部は、「自らが立案した予算」を「自らが実現できていない」のです。現執行部において、本稿で検討した公開情報程度の財務資料しか作成していないのであれば、各事業・行事毎に、経費を予算内に納めることができるか(あるいは、この程度の経費超過であれば、内部留保でまかなっても正当化できるか)といった検討を行いながらJARLを運営していくのは無理であろうと思います。「JARLの公開情報はそのような検証の役に立ちません」というのは、私にとってだけではなく、現執行部にとっても検証の役に立たないだろうということがいいたかったのです。

(なお、仮に、より詳細な、各事業・行事毎の損益比較資料を内部的には作成しているのであれば、それを、JARL会員に公表すべきです。分析に堪えない財務資料のみを公開し、詳細な財務資料を公開しないから、社員総会において、会長の出張費はどの項目に含まれているのかといった決算案に関する細かい質問が噴出して時間が浪費され、より実のある議論に時間を割くことができなくなっているのではないでしょうか。)

もあれ、JARLが現在作成している財務資料では、執行部がいくら「財務改善を行う」といっても難しいのではないかと思います。私は、JARLの財務資料の改善と、その公開によるJARL運営の透明化についても、実現に向けて努力していきたいと考えています。

(以上下線部を、2020-03-10 07:30に追記)

JARLの財政について(JARL選挙所信その3)」への7件のフィードバック

  1. JARL改革に向け立候補ご苦労様です。
    JARL財政に関し、大変大きな無駄な部分があり、ぜひ改革に向けご尽力いただきたいと考えます。
    ご提示いただいた収支分析に関し、ご存じであれば教えてください。
    最下段に「ソフトウェア償却 19.330K円」とありますが、この償却費の中身をご存じであれば
    JARLの財団規模・内容からしてあまりにも高額な償却費が計上されていることに、驚いたためです。

    • ねぎらいのお言葉をありがとうございます。ご指摘のソフトウェア償却費の中身は私にもよくわかりません。2017年にTSSとの裁判が決着し、同社に和解金(金額は未開示)を支払っていますが、その和解金が計上されているのかも知れません。

  2. ピンバック: 7K1BIBの選挙活動まとめ | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

  3. ピンバック: 「JARL会員ファーストの会」の公約を検証する – 2020年JARL選挙情報

  4. ピンバック: 「JARL会員ファーストの会」の公約を検証する – 2020年JARL選挙情報

  5. JARL Newsを紙からWebへの切り替えは経費削減の意味からもぜひ前向きな検討を進めてください。
    QSLの電子化については、eQSL等参考にできる既存システムもあり、後々無駄な経費で終わらないものの開発を期待します。
    ささやかですが1票入れておきます。改革に期待します。

    • ご投票ありがとうございました。はい、いずれも、アマチュア無線家の皆さんのご意見を伺いながら前に進めていきたいと思います。そのためには、改革派の仲間が一人でも多く当選すること、改革派の考え方にひとりでも多くの会員の方々のご賛同をいただけることが必要です。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。

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