JARLの「QSL画像あぷろだ」計画

Turbo HAMLOGの作者、JG1MOU浜田さんの2020年1月25日 (土)付けブログ記事「JARL電子QSLシステム」が、Twitterで回ってきました。気になる記載があります。

JARL電子QSL委員会としては、QSOの照合はしない、つまり紙のQSLカード
を単に電子化しただけのシステムということで協議が調っています。

(中略)

年に数回の委員会開催ですが、平日に仕事を半日休んで、大塚まで
出かけています。
しかし、2015年の電子QSL分科会立ち上げからもうすぐ5年。

あまりにも時間がかかります。
数ヵ月前に話し合った内容など、忘れてしまいますし。
個人的には、さすがに3年目あたりから諦めモードです。

(中略)

聞いた話では、今年2月のJARL理事会で否決されたら、電子QSLの件は
お蔵入りみたいな・・・。

可決されればよし。否決されても十分に協議したうえでの否決だからよし。
ってところでしょうか。
会長派と反会長派で割れているんでしょうかね。

予算案が否決されたら暫定予算でしょうから、電子QSLどころではないでしょうし。
部外者にはよくわからん世界ですが。

5年も付き合わされている浜田さんには、お気の毒としか言いようがありません。JARL本部の動きはどうしてこんなに遅いのでしょう。

さて、電子QSLといえば、2019年11月のJARL理事会で、「電子QSL仕様案を公開して、会員の意見を募集したらどうか」という大矢理事の議案について、髙橋理事から、「会員の意見を聞いていると電子QSLの稼働が遅れるので、議案には反対」との意見が述べられ、髙尾会長、日野岳専務理事、電子QSL担当の髙橋理事他8名の反対により否決されたことが記憶に新しいところです。

ところで、JARLが現在計画している電子QSLの案とは、どんなものなのでしょうか。聞くところによると、ポイントは以下のとおりです。

  1. 現在の紙カード交換の仕組みを単に電子式に置き換えたもの。QSOデータをサーバーにアップロードすると、あらかじめ登録していた画像データを合成してQSL画像データを作る。
  2. QSOの相手方は、サーバーにアクセスして画像をダウンロードする。ダウンロードしたQSL画像データは自分で保管・管理(サーバーからは削除)
  3. QSOデータの照合確認はしない。
  4. 対象はJARL会員のみ(ライフメンバーも転送利用料を払う。)
  5. 開発初期費用1530万円+サーバー16万円。画面デザイン費は別途。
  6. 運用費用は36万/月(=432万/年)。

これって、「電子QSL」でしょうか。QSL画像データを、サーバーを介して送るだけ、つまり、ほとんど単なる「QSL画像あぷろだ」(アップローダー)ではないでしょうか。

対象はJARL会員のみとするということは、これを会員集めの目玉にするつもりなのでしょうが、会員が増えるほど魅力的でしょうか。すでに、eQSL.ccあり、LoTWあり、Clublogあり、AirHamlogありという市場に、こんな貧弱なシステムで参入するのでしょうか。

これを、初期費用2000万?、年間500万使って(さらにOSのバージョンアップ対応費用、ハード更新費用も必要でしょう。)、始めるつもりなのでしょうか。電子QSL委員会で、このシステムの経費削減効果が実証的に検討された形跡はありません。「電子QSLも送るけど、紙も送る」人が続出して、却って全体経費が増すことだって十分考えられるのです。

ところが、髙尾会長は、今年元旦のブログ記事で、突然、

アマチュア無線連盟会員の皆様の満足度の向上、各種サービスのご提供、青少年の方々の育成や女性の方々のサポート、電子QSLシステムの運用に向けてさらに努めて参ります。

と書いておられます(なぜかJARL公式ページのご挨拶は電子QSLに触れていません。)。まさか本当に、今年2月22日・23日に予定されているJARL理事会に、「電子QSL推進」の議案(あるいは、電子QSL開発開始を前提とした予算案)を提出し、会員の意見を聞かないまま、電子QSLを強行するつもりなんでしょうか。

費用対効果も含めて,システム開発の専門家を交え、もう少しまともに案を検討し、JARL会員に提示して意見を聞く。あるいは、もうすっぱりやめる。検討に5年も掛けていますが、会員に意見を聞き反映させるのは半年もあれば十分でしょう。そういうプロセスをなぜとれないのでしょうか。

サービスは、一度始めたら簡単にはやめられません。次世代に、このような負担を、会員の同意なしに残すつもりなのでしょうか。

これが、会長のいう「会員ファースト」なのでしょうか。

 

そもそも論として、「QSLカードの交換が面倒」「JARL経由で交換と言われるのがイヤ」という理由で、オンエアを躊躇してしまう方が相当数いらっしゃいます。最近でこそ、「ノーカードでも結構ですがカードどうしましょうか?」と言われる方が徐々に増えてきました(私もそう言っています。)が、他方で、忙しくてカードの発行が遅れている時に、QSO相手から「まだカード来てません!」と怒られる例(カード交換を強制する人の存在)も多数報告されています。

QSLカードの負担が、オンエアの障害になってしまっていては、本末転倒です。

フリラ運用では、コールサインでTwitterアカウントやブログを確認してQSOのお礼をし、会話が続くことがあります。アマチュア無線における交信証明のあり方も、多種多様であってよいのではないでしょうか。

このように、問題は電子QSLに限定されません。紙QSLについても、今の島根ビューローがが安泰なのか、いつまでカード転送を受託してくれるのかもわかりません。IARUは、環境問題の視点から、紙カードの削減を提言しており、JARL現執行部がこれを知らないはずはありません。

「アマチュア無線における交信証明のあり方」について、根本的に見直す時期に来ているのではないでしょうか。

(以上 2020-02-11 記)

自分の本業である法律家としての視点で追記します。システム開発委託契約は、とかくトラブルが起きやすい契約類型です。発注者が受注者に開発を丸投げしてしまい、できあがったものをみて「こんなはずではなかった」と文句をいうケース、逆に発注者が「あれもやれ」「これも」と仕様の追加を要求し、受注者から開発費用の追加を要求されるケースなど、枚挙にいとまがありません。途中で開発が頓挫することも珍しくありません。特に、発注者側がシステムのことをよくわかっていないケースが危ういのです。そういうトラブルを、本業においてたくさん見てきました。JARLについても、心底心配しています。

(以上 2020-02-12 追記)

IARUが、環境問題の視点から、紙カードの削減を提言していることのソースが、IARUのサイトの改修にともなって見つけられなかったのですが、ようやく再発見しました。2018年9月12日にソウルで開催されたIARU理事会(Administrative Council)です。

sensitive to the importance of avoiding the unnecessary environmental impact of QSL cards being printed, transported, and ultimately discarded without being delivered,

resolves that member societies are encouraged to continue to offer QSL bureau service in their countries, exchanging cards with the bureaus of other member-societies, for as long as doing so is economically justifiable, and

further resolves that amateurs are encouraged to adopt confirmation practices, including but not limited to using electronic confirmation systems, that reduce the volume of unwanted and undeliverable QSL cards being introduced into the bureau system.

超訳すると、

「配達されず捨てられる紙カードが環境に与える影響は避けなきゃね」

「お金があるなら紙カードビューローを維持してもいいけど」

「要らない紙QSLカードを削減のために、アマチュアの皆さん、電子的な交信確認システム[BIB注:電子QSLカード交換システムとは言ってない]等の交信確認手段を採用してね!」

なお、このIARU理事会は、同時期(2018年3月10日~14日)に同じソウルで開催されたIARU第3地域総会の途中で開催されたものですが、髙尾会長はJARL会長として12年ぶりにこのIARU第3地域総会に出席されたそうです。なので、このIARU理事会決議、「知らなかった」とは言わせませんよ?

IMG_3289.JPG

(以上 2020-02-12 01:00 追記)

JARLの「QSL画像あぷろだ」計画」への8件のフィードバック

  1. ピンバック: 7K1BIBの選挙活動まとめ | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

  2. ピンバック: 「JARL会員ファーストの会」の公約を検証する – 2020年JARL選挙情報

  3. ピンバック: JARLの委員会について | 7K1BIB/AC1AMの業務日誌

  4. ピンバック: JARL正常化プロジェクト

  5. 7K1BIB山内さんの見解に全面的に賛成です。
    eQSL.ccが無料で照合までしてくれるのに有料で単なる紙カードの電子化では誰も使わないでしょう。
    既存の各種のQSLシステムを超える機能と使い勝手、費用対効果(開発・保守、利用者にとっても)がなければ無用の長物になります。

  6. なるほど、浜田さんがQSL画像サーバーを用意し、Hamlogユーザーを対象に無料でemailでの配送サービスを施行されてますが、ここにかかれたことがバックグラウンドの一端となっているようですね。今年の春から始められてますし。

  7. QSObankシステムを提案し、却下された件を端折らないでくださいませ。(Hi)
    ソースコードが無料提供いただけるので、安価で短期間に電子QSLが実現できて合理的
    という理由からでした。もう、いまさらですけど。

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